エポキシ樹脂塗料の塗膜変色について
技術資料0291.まえがき
長期防食を目的にエポキシ樹脂塗料を用いた塗装システムが広く採用されています。しかし、この塗料は乾燥過程や屋外で長期ばくろされた場合に白っぽく変色することがあります。以下に、この原因と対策について説明します。2.塗膜の変色の原因および防止対策と処理
■2-1変色の原因
エポキシ樹脂塗膜(以下は塗膜と記す)の変色は、塗装後に塗膜が乾燥過程で直接、雨水や結露に接した場合に生じる現象と、長期間太陽光線(紫外線)にばくろされた場合に生じる現象(一般にいわれる変退色)があります。塗膜の変色に直接影響する要素として、水分と紫外線があげられますが、これ以外の促進要素として、熱、酸素、煤塵などがあります。すなわち、
- 塗装後、短時間に生じる塗膜の変色は、塗膜のごく表層部分でエポキシ樹脂中の低分子分や硬化剤成分などの親水性成分が水分と接して水和物となるためである。
- 塗装後、長時間経過後の変色現象は、同じく塗膜のごく表層部分のエポキシ樹脂が紫外線、水分、熱などの作用によって劣化し、粉化(白亜化)するためである。硬化剤中のイソシアネートが水と反応し、反応物の生成により白っぽく見える。
なお、塗膜の変色程度は塗料組成(エポキシ樹脂、顔料、硬化剤など)の違い、乾燥程度さらに環境条件などによって差があり、かなりのばらつきがあります。
■2-2変色の防止対策
塗膜の変色の防止対策としては、前述したように変色の要素である紫外線や水分などとの接触を避けるような施工や管理が必要です。
具体的な例としては、次のようなものがあげられます。
- できる限り屋内で塗装する。
- 屋外ばくろ部位では、耐候性のよい塗料を上塗りする。
- 塗装後は、定められた条件下で乾燥養生する。
■2-3変色の処理
通常、変色は塗膜のごく表層部分のみの現象で、塗膜性能(防食性や耐水性など)には影響はなく、美観面で問題がなければ特に処置の必要はありません。処置が必要な場合はつぎのような方法があります。
- 乾燥過程で変色した塗膜については、溶剤で変色部を拭き取る。ただし、この場合は溶剤拭きを行った部分は光沢(つや)がなくなり、美観面で十分ではない。
- 屋外で長時間ばくろされた塗膜については、塗面を全面目粗しを行い、清掃後は耐候性のよい上塗塗料を塗装する。
3.変色塗膜と正常塗膜の性能比較
乾燥過程で水分の影響を受け変色した塗膜と正常な塗膜の性能比較を実施しました。その結果は表-1のとおりですが、外観での評価以外の塗膜性能には差がありません。
■表1.変色塗膜と正常塗膜の性能比較
試験項目 | 要求内容 | 変色塗膜 | 正常塗膜 |
---|---|---|---|
耐屈曲性 | o10mm異常なし | ○ | ○ |
耐衝撃性 | 1/2インチ×500g×300mm異常なし | ○ | ○ |
耐アルカリ性 | 5% NaOH溶液7日 異常なし | ○ | ○ |
耐酸性 | 5% H2SO4溶液7日 異常なし | ○ | ○ |
耐揮発油性 | 3号揮発油2日 異常なし | ○ | ○ |
耐塩水噴霧試験 | 塩水噴霧5日 異常なし | ○ | ○ |
耐湿性 | 50℃ 95%RH5日 異常なし | ○ | ○ |