コンクリート構造物は、標準耐用年数が50年と長く、近年まで、コンクリート劣化が十分に理解されていなかったため、メンテナンスするということがありませんでした。
しかし、コンクリート構造物の主材はセメントで、一般にこの種の材料は、強いアルカリ性を示し、空気中の二酸化炭素や酸性雨による酸類との反応で中性化し、表面の粉末化、ひび割れなどが発生するとともに、素材の機械的強度が低下します。さらに吸水性も高く、これは素材の劣化を早めるとともに、コンクリートの内部の鉄筋の腐食(体積膨張4倍)、アルカリ骨材反応(膨張)、吸着水の凍結膨張などにより、コンクリートの破壊が発生します。
以上のことより、コンクリート構造物のライフサイクルをできるだけ長く保つためには、メンテナンスが不可欠ということになります。
因 子 | 要 因 | 結 果 |
---|---|---|
環境因子 | 酸性雨 | 中性化 |
施工因子 | 海 砂 | 塩 害 |
砕 石 | アルカリ骨材反応 | |
地域因子 | 凍結防止剤 | 塩 害 |
凍 害 |
■鋼材の腐食(PHとの関連)
対策・検討
各政府機関、公団では、コンクリート防食対応に急務を要した背景から、試験研究、実態調査等をもとに、昭和62年の「コンクリート防食塗装指針(案)」をはじめとして、平成3年に「コンクリート防食指針(案)」を作成し、その後、試験研究、施工実績等の様子を見ながら、平成5年そして平成9年と随時、改訂を行い、設計、施工をしています。
剥落事故
高架橋および橋梁におけるコンクリートの剥落等が昭和60年頃から相次ぎ、原因の究明とその対策についての検討が行われました。剥落箇所の補修や劣化の予防工事を行ってきましたが、その後もコンクリートの剥落が続き、平成11年7月以降、高架橋等の緊急点検等を実施、補修を行いました。
■塩害中性化
水分の浸透と共に塩分、炭酸ガス、酸素が浸透し、コンクリートの中性化進行する。それにより、鉄筋が腐食し、体積膨張(2.5倍)することによりコンクリートにひび割れを生じさせる現象。
■アルカリ骨材反応
コンクリート中のアルカリ分(Na・K)と骨材中の有害シリカ成分(SiO2)が反応して生成した膨張性のゲル状物質が、吸水し、膨張することによってコンクリートにひび割れを生じさせる現象。