- 2022.07.15
- 製品・技術
外壁修理のコスト削減のカギは、建物の現在を知る調査診断
工場や倉庫、ビルなどの外壁メンテナンスは、その必要性がわかっていても先送りにしてしまう方も多いかと思います。しかし、修理を先延ばしにすればするほど後にかかるコストが大きくなるだけでなく、建物の寿命を縮め、本来は必要のなかった工事をする可能性もでてきます。こうした事態を避けるのに大切なのは、建物の現状を正しく知ることにあります。今回は「どのようにして建物の状態を知るのか?」「どうすればコストは抑えられるのか?」をご紹介いたします。
1. 外壁修理のトータルコストを削減するために
建物の劣化とコストの関係
このグラフは建物の劣化度とメンテナンス費用の関係をイメージ化したものです。
劣化が進むほど、メンテナンス費用が急速に上昇することを表しています。
一例として、外壁などにできる「クラック」と呼ばれる亀裂やひび割れも、乾燥や経年劣化などで生じます。
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<開口部のひび割れ>
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<シーリング材の劣化(ワレ・切れ)>
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<爆裂による鉄筋の露出>
このクラックを放置しているとコンクリート内の鉄筋が腐食して、コンクリートの爆裂を引き起こし外壁が欠損してしまいます。こうなると、当初はクラック部分の修理で済んでいたはずが、コンクリート鉄筋の防錆補修と爆裂で欠損したモルタルの補修が必要となり、修理費用は大幅に増加してしまいます。
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<鉄部の腐食 (孔食さび)>
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<塗膜のチョーキング(白亜化)>
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<磁器タイルの浮き>
クラック以外にも「サビ」の発生や、外壁表面を触ると粉状のものが付着する「チョーキング」、さらには塗膜の「剥がれ」やタイルの「浮き」など、劣化の種類はさまざまで、気候や建物の立地条件によって想定よりも早く発生・進行します。
調査診断でリスクとコストを低減!
どこの劣化がひどくて、どこの傷みが少ないのか?調査・診断の実施が、適切な修理工事を行うための第一歩です。
- ■専門的な知識と豊富な経験を持った担当者による調査診断にはこのようなメリットがあります。
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- ◎経済的な改修設計・工事の実現
⇒建物部位ごとの痛み具合や要望に合わせた改修などができ、効率的で経済的な工事の実施が可能
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- ◎過剰な品質・性能仕様、低品質な改修工事の防止
⇒科学的な調査診断により経済効率の高い工事ができ、過剰品質・低品質な修理・修繕を回避
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- ◎長期的な修繕計画の作成
⇒建物の劣化度を明らかにすることで緊急性を要する工事だけでなく、長期のメンテナンス計画が作成可能
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- ◎ダメージ箇所の早期発見
⇒タイルやモルタルなどの落下をはじめ、損害賠償責任を生ずる建物災害の予防や、欠陥・瑕疵を早期に発見することでリスクを抑制
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- ◎入札や業者選定の資料に最適
⇒中立的な立場の専門家が作成した調査資料なため、公平な入札や業者選定に活用が可能
2.調査診断のフローと検査内容のご紹介
外壁の亀裂やサビなどは放置し続けていると、より深刻な事態を引き起こしてしまいます。
科学的な調査診断の実施が建物の安全性を高めるだけでなく、修理・修繕のコスト削減の鍵となります。
以下の図は、調査診断をする際のフローチャートです。調査診断の4項目「目視・触診による調査」「打診調査」「付着力強度の調査(塗膜付着力試験、クロスカット試験)」「コンクリート中性化深度測定試験」の内容をご紹介します。
目視・触診による調査
外壁に意図せず生じる「亀裂」や「ひび割れ」は、「クラック」と呼ばれ、建物自身に生じる動きや、寒暖の差による膨張収縮など、さまざまな不可抗力的な要因により起こります。
この亀裂が直ちに修理が必要なものかの判断は定規やコンベックスなどで幅を測り目視で確認します。
測定した亀裂の幅が一般に「0.3mm以上」の場合、被りコンクリートの破壊や「漏水」の要因となりかねません。
工事を実施する際は、漏水をはじめとした症状に応じた修理が必要となります。
また、触診調査は目視調査ののち、外壁やシーリングなどを直接手で触れ、その感触から劣化の判定します。
このような調査を行い、状態によってはより詳細な調査を実施します。
打診による調査
「打診調査」とは打診棒を使って壁面を叩き、その音の差異を聞き分けて内部の異常を発見する調査です。
ここで異音が発するのは、経年劣化により内部に「浮き」が発生している可能性が高いと考えられます。
この「浮き」とは躯体コンクリートと下地調整材やモルタル間、もしくは各仕上材間の層間接着力の低下に伴う、内部での破断現象を指します。
一見しただけでは浮きの発生は特定しにくく、気づかずに放置していると「欠損」へと至ってしまい、モルタルやコンクリートなどが崩れ落ちて、歩行者や周辺建物などに危害を加える恐れがあります。
なお、外壁打診調査は、平成20年の建築基準法施行規則の改正に伴い、10年ごとの定期調査時に「全面打診」による調査が義務付けられています。
付着力強度調査
仕上塗材や、下地調整材も永年の雨風や紫外線の照射の影響により経年劣化し、美観・撥水・防水機能が低下して塗膜の下地への接着機能が失われます。
そのままの状態で放置していると下地の劣化に拍車をかけ、各種塗材の広範囲にわたり本来の機能である、コンクリートの保護機能を失ってしまいます。
この「塗膜付着力試験」では現在の塗膜の付着強度を測定し、塗膜の付着状態・造膜状態をチェックして劣化状態を評価し、工事での修繕方法・仕様・工法などの選定材料にすることを目的としています。
【塗膜付着強度試験】
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付着力試験機により加圧
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デジタルゲージ接写
塗膜にアタッチメントを装着し、付着力試験機で加圧。デジタルゲージで付着強度を測定します。
【クロスカット試験】
鉄部の塗膜付着力試験は、セロハン粘着テープを用いて判定する「クロスカット試験」を実施します。
剥離状態を見て劣化度を比較し、塗り重ね可能な塗膜か否かを判断します。
中性化深度測定調査
コンクリート中の鉄筋はセメントの水和反応で生成する水酸化カルシウムCa(OH)の高アルカリ性により、腐食から守られています。この水酸化カルシウムは空気中の炭酸ガスと反応を起こすと、炭酸カルシウムとなり、この状態になるとアルカリ性は次第に失われていき、それにより「コンクリートが中性化」してしまいます。
コンクリートが中性化すると内部の鉄筋は腐食しやすくなり、建造物の構造・耐久力の低下につながります。
この「中性化深度測定」は、事前の調査診断作業の中でも特に重要です。
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①
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②
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③
①躯体表面から10~20mm程度のサンプルをコア抜きドリルにより抜き取って採取
②採取したコアサンプルに試薬であるフェノールフタレイン溶液をかける
③無色透明なフェノールフタレイン溶液はアルカリ性に反応して赤変
赤紫色に変化した部分はpH=10以上の比較的高いアルカリ性であるため正常部であることがわかり、一方で無色透明の部分は中性化進行部と判断できます。
この無色透明部分が躯体表面からどの程度進んでいるかをノギスで計測して、進行を防ぐための対策を立てます。
3.まずは「専門家」にご相談ください
外壁の修理は放置しておくと本来は必要のなかった修理が発生してしまいます。
そうならない為にも少しでも気になることがありましたら、まずは調査診断を依頼するのがオススメです。
関西ペイントでは長年培ってきた知見をベースに、最新の塗料技術を組合せてご要望やニーズに合わせたご提案をしております。
弊社が実施している調査診断の詳細については、以下の「お問い合わせ」ボタンよりご連絡ください