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オール水性

PROJECT STORY

自動車補修を変える
高機能な水性塗料を

OUTLINE

SDGsやESGを基軸にした企業活動が不可欠となった今日、関西ペイントは地球環境と人にやさしく、顧客の高支持を得る水性塗料の開発に大きな力を注いでいる。自動車補修で画期的な機能を発揮する新製品の開発に携わった3名の社員の活躍を追った。

Profile

プロフィール01
M.Ho

研究開発部門 技術開発本部
2011年入社
自然科学研究科 分子科学専攻 修了

プロフィール01
M.Hi

日本事業部門 車両技術統括部
2010年入社
物質科学工学科 応用化学専攻 修了

プロフィール01
S.I

日本事業部門 自動車補修塗料統括部
2009年入社
経済学部 卒

STORY 01

溶剤系に負けない水性塗料を目指し
プロジェクトが始動

 SDGs(持続可能な開発目標)やESG(企業の長期的成長に必要な観点)が社会的に注目を集める中、カーディーラーやカーショップなどの自動車補修業界においても人材確保や職場環境の改善、法規制への対応を図る動きが進んでいる。それらを実現する有効な手段の一つが、補修で使用する塗料を従来の溶剤系から水性塗料へ切り替えることだ。関西ペイントはいち早くそこに着眼し、2018年に塗料業界初となる補修専用の水性塗料『オール水性 有機則フリーシステム(R)』を市場に送り出した。しかし上市した当初は機能面で溶剤系塗料に追い着かない部分もあり、本格普及までにはなかなか至らなかった。そこで同製品のバージョンアップを図る新たな開発プロジェクトがスタート。技術開発本部のM.Ho、車両技術統括部のM.Hi、自動車補修塗料統括部の S.Iの3名が中心になり、新製品開発と市場投入を進めることになった。
 一般的に水性塗料は人や環境にやさしい反面、溶剤系塗料に比べて乾燥性(乾くまでの温度・時間)や塗装作業性(塗りやすさ)、塗膜品質(耐久性)に劣る特徴がある。今回の新製品はこれらを完全に払拭し、溶剤系塗料と同等もしくはそれ以上の機能と価値を付与することが開発テーマとなった。
 「塗料の最も上層皮膜に当たるクリアコートという透明層の乾燥時間を短縮するのが最初の大きな課題でした。溶剤系では汎用乾燥温度60℃で10〜20分で乾くところを、先行製品の水性塗料では60分ほどかかっていたのです。この時間を大きく縮めつつ、どんな環境下でも塗装面が美しく仕上がるようにしなければなりませんでした。こうした課題を解決するには原料となる樹脂を一から見直さねばならず、その探索と研究に相当な時間と労力を要しました」と初期開発から手掛けたM.Hoが振り返る。

STORY 02

原料開発や現場検証に
多大な努力と試行錯誤を重ねた

 かつてない高機能な水性塗料の設計に挑んだM.Hoの前にまず立ちはだかったのは、水ならではの特性に起因する技術的課題だった。例えば、水は表面張力によって玉状になりやすい。それによって溶剤系塗料よりも塗れ広がりにくく、平滑な塗装表面にしにくいのである。また、水の蒸発が周囲の温度や湿度に大きく影響を受けることもあった。季節や天候、使用する場所の違いを超え、溶剤系塗料に匹敵する乾きやすさを可能にするのは至難の業だった。これらの解決に向けてM.Hoは、無数の素材配合から適した樹脂の組成を探ってゆく研究作業に奮闘。試作品を作っては評価を行い、改良を加えてゆく試行錯誤を繰り返した。その過程では、完成近くにまでたどり着いた原料に問題点が発覚し、開発の大幅な逆戻りに直面して心が折れそうになったこともあった。
 「自信を持てる原料組成にしたプロトタイプを形にするまで、約3年は費やしたと思います。といっても製品化までにはまだまだ課題も多く、そこから関連部署と連携して作り上げていく次の開発ステージが始まったんですけどね」とM.Ho。

 開発のバトンを受けたのは技術のM.Hiと営業のS.Iだ。M.Hiに委ねられたのは、実際の塗装現場における製品品質と使用感の検証である。モニターとなる複数のお客様へ試作品の試験利用を依頼し、結果をヒアリングして自社にフィードバック。M.Hoと密なタッグを組み、改良が必要な点を開発チームで協議しながら調整を重ねていくことに力を注いだ。片やS.Iはモニター顧客との橋渡し役になってM.Hiとともにさまざまな現場の声を聞き回りつつ、市場展開後の製品プロモーションや販促活動の方向性をまとめ上げていった。
 「寒冷地から温暖地までモニター先を季節ごとにめぐり、かつ各所がどのような設備・空間を持つ現場条件下で塗料を使用されているのかをつぶさに調査しました。実際に使ってもらわないとお客様も製品の善し悪しがわからないし伝わらないので、完成品へ追い込んでいく上でこのプロセスに手を抜くわけにはいきませんでしたね。そうした意味では、今回の新製品はお客様と一緒に作り上げていった感覚もあります」とM.Hiが当時を思い返しながら話す。

STORY 03

英知を結集した新製品が
着実に市場の支持を獲得中

 プロジェクト開始から約5年が経過した2022年、ついに溶剤系塗料と遜色のない高機能性を備えた自動車補修用オール水性システム「レタンWBエコEVシステム3.0(R)」が完成し、販売開始の運びとなった。同新システムには、M.HoとM.Hiが原料等ベース技術の開発に心血を注いで完成させた上塗り用に加え、中塗りや下塗り用塗料も同等の機能を持つ製品をラインアップ。発売から約1年が経過した現在、自動車補修業界の課題である人体への影響や臭気・VOC(揮発性有機化合物)、法規制をクリアする画期的な水性塗料として、採用を決めるお客様が着実に増え始めている。その対応と一層の市場普及に向け、営業のS.Iは多忙な日々のまっただ中にいる。

 取材の最後に3名は、本プロジェクトに参画した印象と無事に完遂できたポイントについて次のように語った。
 「今回は営業・技術・開発が一体となって取り組んだことに加え、モニターになってくれたお客様と、サプライチェーンや広報ほか多くの社内関係者の協力を得られたことが勝因です。大きな仕事を成功に導くにはいかにたくさんの人を巻き込むことが重要であるかをあらためて感じるとともに、今後に向けたよい経験になったと思っています」(S.I)
 「まずは当社に独自の原料樹脂を一から作る技術と環境があったからこそプロジェクトを完遂できたと思います。開発で壁に打ち当たったときに、工業分野など 自部門以外から意見をもらったこともすごく参考になりました。若手の意見も開発途上でたくさん集まったので、役職や年齢、部門の隔たりなく意見を言い合える社風であることを実感しましたね」(M.Hi)
 「一人ではできない仕事量の多さだったので、技術のM.Hiさんと連携して開発を補完し合うことがすごくよい経験になりました。また無数のパターンを探る原料研究で、そのアプローチ方法や技術的観点をこれまで以上に養うことができたと思っています。今回確立した水性塗料のベース技術が他の分野にも水平展開されていくのが大いに楽しみです」(M.Ho)
 関西ペイントが満を持して市場投入した「レタンWB エコEVシステム3.0(R)」は今後、自動車補修用塗料の全国利用図をまさに“塗り替えて”ゆくに違いない。