サステナビリティトップメッセージ

Greatな企業を目指して

はじめに

持続的成長サイクルへの転換と位置付けている第17次中期経営計画(17中計)も最終年度に入り、トラック競技でいえば最終の第4コーナーに差し掛かっています。同様に、2020年11月16日に発表した5か年成長戦略「Good to Great」も4年目を迎えました。昨年の統合報告書では社長に就任してからの振り返りと今後の展望について比較的内省的な観点から述べました。

今回は大きな視点での社会と当社のつながりや、課題と機会をベースに、外に向かって開かれた観点から当社の可能性や将来の展望をお話ししたいと思います。

地球環境、社会との関わり

私がこの記事を執筆しているこの瞬間(2024年7月)も外にいることが危険なほどの連日の猛暑となっており、地球温暖化への対策は待ったなしであることを痛切に感じています。そんな中、関西ペイントグループとは、どのような存在であるべきか、如何に地球環境の保全と社会発展へ貢献していくかを常に考え続けています。

当社グループは今年度年間売上6,100億円を計画しており、年々その規模を拡大しています。当社が生業としている塗料は世の中のたくさんの必要不可欠なモノに使われ、非常に薄い塗膜で被塗物の寿命を大きく延ばします。寿命を延ばすだけでなく、塗膜に様々な機能を付与して便利にし、色彩によって人の心を豊かにするという大切な使命と役割を担ってきました。その起源は数万年前の壁画まで遡ることができ、遠い古の時代から人類になくてはならないものであったことがわかります。そしてこの使命と役割は、人類の持続可能性を高めていくために、より大きく、重要になっていくと確信しています。当社グループは、地球で人類が繁栄し、その生活の質を高めていくために存在する企業です。この使命を果たしていくためには、今までの延長線の活動では、急激に進む地球温暖化や様々な環境破壊などを食い止めることに全く力が足りません。私が社長就任以来、変革に取り組む理由は、当社が明確に地球環境の保全や、人類の発展に寄与し、世界を良い方向に変えていく強力なアクセルとして活躍していくためです。

企業活動の素晴らしいところは、「自ら稼ぎ、自らリスクを負って投資する」という点です。正しいことをしながらより多くの資金を作り出し、その資金を寝かせずに将来のために投資していく。これが循環し、規模を拡大することで世の中への貢献度合いを高めていくことができます。当社が社会に貢献度合いを高めていくためには、利益を拡大し、積極的に投資をすること、つまり当社にインプットされた資本が当社の事業活動を通じて価値を高めてアウトプットされ、このアウトプットがアウトカムとして社会にインパクトを出していく「価値創造プロセス」を着実に進めていくことが求められます。当社が社会に対して価値を創造していくために必要なことを戦略に落とし込んだものが現在取り組んでいる17中計であります。

財務・非財務が連動・連携する17中計

17中計では2年目となる2023年度で当初計画を上回る成果を上げ、売上とすべての段階利益で史上最高を更新することができました。事業では日本の収益性改善が進み、求心力を高める一方、インド、欧州を中心に海外事業が力強く成長し海外売上高比率は70%を超えました。過去の反省を生かし、事業拡大に偏らず、事業を支える基盤の強化にも注力しています。まず、財務構造改革が大きく進展し、政策保有株の縮減、日本やインドの不動産売却などにより資産を圧縮し、CCCの改善にも着手しています。事業から稼ぐ利益に加えてこれらから得られる資金を成長分野に投資していく循環ができました。経営基盤も強靭化を進めています。例えば、遅れていた日本のITはその遅れを取り戻しつつあり、2025年の崖問題も確実に解消できるところまで挽回しています。

また、非財務情報の活用を進めるために開発しているグローバルデジタルプラットフォームも部分的に稼働が始まりました。そして、詳しくは後述しますが、何よりも大切な経営基盤である人財への投資も本格化しています。このように全方位で変革を進め、持続的成長サイクルを作り出すことに手ごたえを感じています。業績面では今年度、引き続き過去最高業績を更新する計画を進めており、17中計を完遂し、次の中計にバトンを渡したいと思っています。

財務構造改革の先に目指すもの

私が社長就任以来、財務構造改革を強力に進めてきました。詳しくは高原CFOのメッセージと当社の財務活動の変遷を統合報告書各ページでご確認いただけますが、私からお伝えしたいことは、財務構造改革の先に目指していることです。それは、当社企業価値の拡大を顧客、株主様、当社従業員などステークホルダーの共通の目的として、皆が価値を共創するパートナーになるということです。

当社は2024年5月に最適資本構成と株主還元について方針を公表しました。この方針は当社の事業成長を核として企業価値を高めていく大きな仕掛けです。具体的には、当社は事業を進める上でお客様の価値を高める製品、サービスを生み出し、その対価を得て成長原資を獲得します。獲得した資金は躊躇なく社内の事業、設備、人財に投資していきます。今回定めた株主還元方針により、事業が成長することが株主様への還元の拡充につながりますので、当社株を保有する十分な根拠となり、当社を取り巻くステークホルダーがOne Teamになることができます。

もう一つ大切なことは、この方針を多くの株主の皆様との対話を重ねた上で定めたことです。社長就任以来継続して対話をしてきた株主、投資家の皆様との関係の積み重ねや相互の信頼があってのことです。何事も一朝一夕にできることはなく、この新たな方針は対話を重ねたことで深まった相互理解を土台に話し合うことができました。また、皆様と何度も対話を重ねた末に利害の衝突を乗り越えていくことができる方針を策定することができた、というプロセスも、今後の当社の成長を後押しする強力な仕掛けであると考えています。

人財育成とグローバルタレントの活躍に向けて

先ほど触れた人財の開発についてと今後取り組んでいくグローバルタレントの活躍についてお話しします。17中計では人財の育成やその仕組みの構築を最優先事項として取り組んでいます。この2年で当社執行役員に2名の海外人財を登用しました。このこと自体大きな変化でありますが、全体に広げていかなければなりません。当社グループにおいて喫緊の課題は、人事制度が遅れている日本です。17中計期間中に、管理職層にはジョブ制を取り入れ、その効果を出すために制度、運用を改善しています。特に2024年度は日本の管理職層全員にアセスメントを実施し、来年度から始まる18中計のためにベストな布陣を組むための準備を進めています。総合職についても成果追求型の人事制度に刷新し、管理職、総合職双方に向けた教育体系を全面的に見直ししています。これらの活動により、能力と意欲の高い人財に能力開発支援を行い、優秀な人財が早く重要なポジションで活躍できる仕組みを確立します。

しかしながら、この日本の制度改革はまだ序の口です。当社は真のグローバル企業になることを目指しています。これは、様々な国の様々な属性の従業員が世界中で活躍する企業になることを意味しますので、次の中計ではグローバル人事制度の確立に取り組みます。これまで内にこもりがちであった当社日本の活動を日本の外に向け、世界各国のグループ会社を巻き込み、世界的に競争力があり、成長意欲の高い人財にとって魅力ある企業に変えていきます。このためには、グローバル人事制度の設計と文化の醸成に取り組むことが次の課題です。

この人財育成について、当社は過去、決して得意な分野ではありませんでした。この課題に取り組んでいくために、外部専門家や、キャリア採用を活用していくだけでなく、異分野での経験と知見が豊富な社外取締役の皆さんに助言をいただいて当社ならではの魅力あるグローバル人財マネジメント戦略を構築していきます。今後、世界規模での人財交流を活性化していきます。世界中にいる優秀な従業員の活躍の場を広げることが成長を加速することにつながると考えています。

ガバナンス

当社の過去の反省としてガバナンスと収益性の低下について、昨年の統合報告書でお示しした通りですが、そこからの回復、更には新たな成長はその逆で、ガバナンスと収益性の強化によってもたらされています。この観点から、ガバナンスの改善、強化は継続していかなければ、どんなに素晴らしい構想を思い描いたとしても実現しないと言えます。当社は第160回定時株主総会にて監査等委員会設置会社に移行しました。今後は取締役会と執行の責任と権限をより明確に、取締役会は戦略、人財、ガバナンスなどの大きな方向性と執行のモニタリングに特化していきます。

関西ペイントのこれから

当社は16中計、17中計を通じて変革を進め、間違いなく良い会社になってきました。まさにGood to Greatを体現していると自負しています。しかし、今が満足かといわれると、全く違います。変革を進めれば進めるほど、もっと先のあるべき姿、そこに至るまでの課題が浮き彫りになり、やらねばならないことが次々と出てきます。実際、当社が真のグローバル企業になるためにはたくさんの解決すべき課題があることが明確にわかってきました。当社には多くの良いところがありますがまだ使い切れていません。グループ各社の責任と役割を明確にし、One Kansaiとして潜在能力をいかんなく発揮し、事業成長を加速することが何よりも大事なことです。そして、DXを活用することで開発、生産、サプライチェーン領域を変革することや開発領域や非財務活動にAIを活用していくことなど、新たな可能性への挑戦もしていきます。

2024年11月に当社は次の戦略を公表しますが、対処すべき課題は3年間で解決できるものばかりではなく、もっと時間を要するテーマもあります。当社が真のグローバル企業となるために必要なことは時間をかけてでも必ずやり遂げます。次の18中計は、2030年を見据えた大きな戦略を実現するための3か年計画という位置づけで策定を進めており、よりダイナミックな挑戦をしていきますので、是非、今後の当社に期待をしていただきたいと思います。

代表取締役社長